はじめに
3DCG制作において使用するPCは非常に重要なツールです。以前はワークステーションと呼ばれる機材を用いて制作を行っていましたが、現在ではPCの基本的な性能が向上しており、ワークステーションと呼ばれる区分のマシンでなくても制作業務が行えています。そんなPCですが、10年前のCG制作のおいて重要なパーツはCPUでした。CPUですべての演算を行いレンダリングしていきますので、この処理能力の優劣が出来上がりのクオリティ・時間に大きく影響していました。
ここ10年でレンダリングや演算処理はCPUからGPUへと変わりました。演算速度は向上しましたが、求めるクオリティや解像度も向上しているので、結果として制作時間が短縮されることには至っておりません。
さて、そんな状況でAIによる動画生成が本格化してきました。従来のような映像制作と違う面もありますが、ものづくりという考え方でいうと新しいツールの出現ということになると考えています。
そんなAIによる動画生成をローカルで行うには、どのようなパーツが重要になるのでしょうか?3DCGクリエイターの目線で必要条件や選定について真剣に見ていこうと思います。

検討すべきパーツ
数あるパーツの中で、以下のパーツが重要と考えました。
CPU
パソコンの心臓部と言われていたパーツ、制作における演算処理の多くがGPUになったとしても、GPU・ストレージ・メモリ・LAN等を行き交うデータを制御しているのはCPUですので、これの性能が良いほど快適になります。
ここで重要だと考えるのは、ワットパフォーマンスで、GPUが電力不足にならないようにCPUで大量の電力消費を行わないことが大切です。
制作用途のCPUでは、代表的なメーカーとしてIntelとAMDがあります。Intelは現状のモデルにおいてやや電力消費が激しいものが多いので、AMDが良いと判断し、下記のモデルを候補としたいと思います。
CPU名 | コア数 | ベースクロック | TDP |
Ryzen7 9800X3D | 8コア/16スレッド | 4.7GHz | 120W |
Ryzen7 9700X | 8コア/16スレッド | 3.8GHz | 65W |
メモリ
Windows11の場合、16GBでは通常使用ではギリギリだと思います。実際の制作には64GB以上あると安心です。32GBでも制作は可能だと思いますが、大きめの素材を扱う際は速度が低下する可能性があります。
メモリにおいては容量が気になるところだと思いますが、CPUをAMDにしましたので、枚数、動作クロックも検討しておくとより性能が引き出せます。
メモリの枚数は2枚、シングルよりも2枚で動作させる方がメモリのアクセス速度が向上します。
メモリの速度は、DDR5-5600という規格になります。この5600という数値がクロック速度になり、オーバークロックという手法を使うことで、より高い速度でメモリアクセスを行うことができます。その場合はDDR5-6000などの規格のメモリを使用することになります。
では、制作業務において、オーバークロックはどのくらい効果があるのか?
あまり意味は有りません。正確にいうと意味が無いわけではありませんが、FPSのような一瞬の勝負のような場面が制作においてはあまりないと思いますので、そこまでの必要がない、ということです。むしろオーバークロックするために電源のチューニングを行ったり、それで安定性を欠くことにつながる可能性があるなら、定格動作で良いと思っています。
GPU
最も重要なパーツです。特にGPUのメモリ容量(VRAM)とコアの世代が大きく影響します。また現状ではNVIDIA製のチップが最もよく、それ以外は環境構築で難易度が高くなることが想定されます。
GPUメモリ(VRAM)
VRAMの容量により、生成できる画像の解像度が変わります。動画の場合は解像度とフレーム数が変わります。動画用途であれば24GB、静止画用途の場合は12GB以上が必要になります。
ただし、使用するモデルや、ワークフローにより、12GB以下のVRAMでも動作させる事が可能なケースもあります。難易度は上がりますがトライする価値はありそうです。
コア(世代)
NVIDIAの場合、RTX5080、RTX4080、といった数値の変化で示され、千桁の数値が世代数を示しています。
・RTX5080:Blackwell世代
・RTX4080:Ada Lovelace世代
世代が進む(数値が大きくなる)につれ性能が向上しています。
十桁の数値はGPUのグレードを示しており、大きいほうが性能が高く、90が最も性能が高いものになります。
このチップを使用して多くのメーカーからGPUボードが発売されていますが、グレードの高いものがVRAM容量が大きく、エントリークラスになればVRAMも小さくなっています。
生成AIにおいて使用するGPUは下記を候補とします。
名前 | VRAM | TDP | CUDAコア数 |
Geforce RTX5090 | 32GB | 575W | 21,760 |
Geforce RTX5080 | 16GB | 360W | 10,752 |
Geforce RTX5070 Ti | 16GB | 300W | 8,960 |
Geforce RTX4090 | 24GB | 450W | 16,384 |
NVIDIA RTX PRO 4000 Ada | 20GB | 130W | 7,680 |
NVIDIA RTX 2000 Ada | 16GB | 70W | 3,072 |
SSD
AIモデルは容量が大きいものが多いので、ストレージの読み込み速度が早いものが求められます。また運用において発熱の少ないものが安定した運用に繋がります。
また、容量が大きいほうが、書き込み耐性も多く、長く使える可能性が高いと思いますので、おすすめです。
性能で選定していいくとゲーミング用途のものがお送りますが、発熱面で考えるとゲーミング用途でなくとも良いと思っています。
WD Blue 4TB(M.2)を候補としたいと思います。
電源
PC全体の安定をに最も重要なパーツです。特にGPUで大量の電気を消費しますので、いかに安定して電気を供給できるのかは電源ボックスにかかっています。
電源の性能を知る基準のひとつに80PLUS認証があります。これは電力変換効率を示したもので、以下のような順で示されます。
BRONZE<SILVER<GOLD<PLATINUM<TITANIUM
この認証を確認し、GOLD以上のものを選んでおくと良いと思います。
また、容量ですが、使用するパーツのすべての消費電力を足した数字の倍を目安にして容量を選ぶと安定した運用ができます。
メーカーにより使用するコンデンサなども変わりますので、メーカーはこだわって選ぶことが多いです。
・Corsair RM1200e
使用するGPUの電源ケーブルの形状や必要電源容量、ケースの大きさもチェックしないといけません。
ケース
見た目のかっこよさはとても重要。仕事のモチベーションに繋がります。見てほれぼれとするようなケースを選んでください(笑)
あとGPUは排気が多いので、必然的にホコリが溜まやすくなりますメンテナンス性のよいものを選んでおくと良いと思います。ケース内部に風が通ることで冷却も効率よく行えます。発熱を抑えたパーツを選定しても、ケース自体が通気性が悪いと意味がありませんので、このあたりもしっかり確認しておくと良いと思います。
・Corsair FRAME4000D RS
まとめ
以上、3DCGクリエイターの目線で生成AIに必要となるPCのパーツ選定を行ってみました。クラウド生成がメインになる場合は、このスペックは必要では有りませんが、制作という業務はトライ&エラーが多いので、ローカルで生成できる環境があると安心できるような気がします ※個人の感想です
参考になりましたら、幸いです。
