はじめに
AI生成やCGレンダリングを行う際、GPUはフルパワーで動作します。
しかし、常に最大性能で稼働させると、排熱・消費電力・部品の劣化といった問題が無視できません。
特に長時間稼働が続く制作環境では、「安定稼働」と「寿命延長」のバランスが重要になります。
GPUのフルパワー運用の課題
GPUがMAXで稼働している時、以下のような負担がかかります
- 温度上昇:90℃近くまで上昇する場合もあり、サーマルスロットリングの原因に。
- ファン騒音の増大:静音環境での作業に支障。
- 電力コストの増加:長期的には電気代に直結。
- 劣化・寿命の短縮:VRAMや電源周りのストレス増大。
GPUパワー制限とは
NVIDIA製GPUでは、nvidia-smiコマンドを使って消費電力上限(Power Limit)を設定できます。
この設定によって、GPUがフルパワーを出し切らないよう制御し、発熱・消費電力を抑えつつも性能を維持します。
設定
標準の設定を調べる
まず、搭載されているGPUの現在の出力とMAXの値を調べてみましょう。
のGPUの電力制限や初期値は下記のコマンドで調べることができます。
nvidia-smi -q -d POWER
出力された中の、Max Power Limitの数値が最大出力です。
この値を少し下げて調整していきますが、あまり下げすぎるとレンダリング時間が長くなりますので、ご自身の環境での最適値をみつけていくと良いと思います。うちの場合は最大値の80~85%くらいに下げることで安定度も安心度も高くなりました。
パワー制限バッチファイル例
下記のように、Windows用のバッチファイルを作成しておくと便利です。
@echo off
:: 管理者権限で実行されているか確認
net session >nul 2>&1
if %errorLevel% == 0 (
goto :admin
) else (
echo 管理者権限で再実行します…
powershell -Command “Start-Process ‘%~f0’ -Verb RunAs”
exit /b
)
:admin
:: ここに管理者権限で実行したいコマンドを書く
nvidia-smi -i 0 -pl 250
pause
下から2行目の 250 が新しく制限する値になります。
この端末の場合、RTX4080、MAX320W→250Wで運用していることになります。
AIで生成する場合と、CGレンダリングを行う場合で使い分けており、
レンダリング:300W
AI生成:250W
で運用しています。
最後に
クリエイティブな用途でPCを利用する方々にとって、GPUは今や不可欠なパーツになりました。
GPUの価格も高くなるばかり、その一方でGPUを利用するソフトは増えるばかり。
少しでも、安定的かつ長い間GPUが運用できる方法を探し、この運用にたどり付きました。
今後はクラウドのサービスが増えたり、AIを処理する専用プロセッサが搭載されるようになるとGPUの負荷の下がるのかもしれません。いましばらくはこの運用で未来までたどりつけるように頑張ってみたいと思います。

石水修司 株式会社フィジカルアイ代表/Adobe Community Expert
ベーマガに熱中した少年時代から、ベーカム時代の映像制作を経て、現在は3DCG・VFX・生成AIを融合した映像表現を手がける。Lancer of the Year 2016、CGWORLD「CGごはん」選外優秀賞。今治市在住。