古い写真をAIで復元:Nano Banana Proによる高精度レストアガイド

古いフィルム写真には、退色や粒子ノイズ、ピントの甘さ、解像度不足といった問題がつきものです。本記事では nano banana pro を使って、こうした劣化を自然に修復する「AIフォトレストア(AI Photo Restoration)」の手順をまとめます。
AI写真復元は、元の雰囲気を崩さずに色・ディテール・解像度を再構築できる最新の手法です。ここでは、実務でそのまま使えるワークフローとプロンプト例を紹介します。

目次

作業の手順

作業は、多く2つの段階に分けて処理していきます。
【1】解像度アップ+ディテール補正
【2】色調整・補正

AIは一度にたくさんの指示を出した場合、最初の指示を優先して処理します、その結果、後半の処理が不十分になってしまうことがあります。素材の状態により、この工程を分けて実施する方が良い結果になる場合もあります。
プロンプトは、日本語と英語の両方作成しています。実際の指示はどちらかで良いのですが、英語のほうが効きが良い場合があるようです。※個人の感想です

解像度アップ+ディテール補正

最初のに写真の基礎的な品質を整えます。
古い写真は特定部分のディテールが不足していることがあります。必要に応じて、微細ディテールを補完します。

  • 顔の輪郭や表情を維持したまま描き足す
  • 髪の束感・まつ毛・衣服の皺を自然に補強
  • 肌の質感を“塗りつぶし”ではなく“再構築”する

プロンプト

古いフィルム写真を高精度に復元してください。
構図を変えず、人物の印象を保持したまま、
ボケた部分の輪郭を明確にし、顔・髪・肌・まつ毛・衣服の細部を精密に描き出してください。
解像度を上げ、眠さを取り除き、立体的なディテールを復元してください。
色は大きく変更せず、構造の修復を優先してください。

Restore this old film photo with high clarity.
Keep the original composition and identity.
Sharpen blurry areas and enhance fine details of the face,
skin, hair, eyelashes and fabric without altering identity.
Improve resolution and remove softness.
Do not change colors significantly; focus on structural restoration.

色味とホワイトバランスの最終調整

古い写真には、特有の退色が見られます。ここでは、その最終的な色味を整えます。

明度を適正なレベル(中間トーン)に調整してください。
彩度を上げてください。
ハイライトのブルー成分を上げてください。
シャドウのレッド成分を下げて、影を締めてください。

Normalize the brightness to a proper mid-tone level.
Increase the overall saturation.
Lift the blue in the highlights.
Lower the red in the shadows to make the dark areas deeper.

(適宜追加)フィルム粒子ノイズの最適化

粒子を完全に消してしまうと“AI生成画像”のような不自然な質感になります。
少し残すことで、写真ならではの空気感を維持できます。

  • 粒子は完全除去しない
  • 見やすさを損なわない範囲で軽減
  • ディテールを溶かさない処理

フィルム粒子を少しだけ抑え、写真としての質感を保ったまま見やすく整えてください。
ノイズを完全に消さず、自然な立体感と細部を維持してください。
写真本来の空気感を残した処理にしてください。

Reduce film grain slightly while keeping natural photographic texture.
Do not remove all noise. Maintain depth, authenticity and fine detail.
Preserve the original film-like atmosphere of the photo.

実例

よくある失敗と回避策

❌️顔が別人になる
「identity保持」「顔立ちを変えない」と明記する

❌️シャープ過多で硬い画質になる
「自然なディテール補完」と書き、強いシャープ指示を避ける

❌️効果が出ない
プロンプトを長文にしすぎると、補正ポイントが曖昧になってしまうことがあります。
また、指示文言にあいまいな表記があると、結果として目的の効果が得られないことがあります。

まとめ

今回行った、フィルム写真の復元は、考え方次第であらゆるビジュアル制作の工程に応用できます。明度や彩度、ハイライトとシャドウの色味を直接指定するというシンプルな操作指示は、AIが最も理解しやすい言語であり、そのまま“絵づくりの方向性”として反映されます。レタッチソフトの感覚でAIに意図を伝えられるため、画の空気感や統一感を短時間で整える場面に特に有効です。

ポートレートなら透明感のある雰囲気を出したいとき、商品写真なら素材ごとのバラつきを抑えてシリーズ全体の質感を揃えたいとき、映像制作ならカット間の色を整えて世界観を一本の軸にまとめたいときなど、意図した方向へ画を寄せるための“初動”としてそのまま活かせます。生成画像でも同様に、色の散り散りを抑えて仕上げの統一性を出す際に役立ちます。

操作を複雑に説明する必要はなく、必要な項目だけを短く指示することで、AIは迷わず正しい方向へ動きます。こうしたシンプルな指示体系は、今後のAIレタッチの中心的な考え方として、制作のスピードと再現性を大きく向上させるはずです。

PhotoshopにもNano Banana Proが搭載されました。従来の加工が更に効率よく、迅速に行える環境が実現しています。今後が楽しみです。


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石水修司 株式会社フィジカルアイ代表/Adobe Community Expert
ベーマガに熱中した少年時代から、ベーカム時代の映像制作を経て、現在は3DCG・VFX・生成AIを融合した映像表現を手がける。Lancer of the Year 2016、CGWORLD「CGごはん」選外優秀賞。今治市在住。

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