「美味しそう」とはどういうことか?

先日、3DCGでごはんを作ってみましたが、食品というのは3DCGではまだまだ実写に負けている分野ではないかと思っております。もちろんこれまでの事例であれば「コスト」に依存する部分が大いにあったことは間違いないと思います。自動車や建築物と違い、食品は撮影コストに費やすコストが比較的安価です。きちんとしたフォトグラファーをアサインできれば、シズル感ある写真(映像)を実現することは、それほど長時間かかることではないかと思います。
技術的な面で考えると、実は3DCGでもシズル感のある映像を実現することは可能になっています。機材やソフトウェアの進化により、現実の撮影と変わらないレベルでの映像が制作可能です。しかしながら、CGの知識を有する方なら誰でも作れるという訳ではなく、食品のシズル感についてのノウハウが必要になってきます。
各分野においての撮影ノウハウがあるのと同じように、食品分野のシズルに関しても、ビールに塩を入れて発泡させたり、液糖をつかったりするテクニックが多々あります。3DCGbの世界ではこれら全てのノウハウが必要になる訳ではありませんが、主にライティングや「シズル感」に対する考え方は必要になってきます。

そこで、CGでの制作というのを前提に、どのようなものが必要になってくるか、最低限おさえるべきポイントを簡単にまとめてみたいと思います。

まず、「美味しそう」とはどういうことか、これを考えるにあたりどこで「美味しそう」と感じるのか、を考えてみてください。実際に口に入る前段階ですので、舌(味覚)ではありません。この場合の感覚は、目と鼻になります。CG・映像においては香りはありませんので、「目」から入る視覚的なものが(ほぼ)全てと言えます。
※キャッチコピー等で擬音が目に入った場合は、脳内の音も影響すると思われます

「美味しそう」の視覚的要素

では、その視覚的なものをわかりやすく分解してみます。
・何の食品がよくわかる(過去に食べた経験がある、あるいは食べた物に似ている)
・温度を感じる(暖かさ、冷たさ)
・食品以外の季節感(皿、敷物、他の食材、など)
・水、油等が有する反射、照りなど
そして、これらが
・これから食べようという人の目線
で表現されているということになります。
食品のシズル 湯気

そして、これを映像で表現する為に必要となるのが下記になります。
・アップで撮る(被写界深度を浅くする)
・比較的低い視点
・ラインティングでテリツヤを出す

ライトティングの調整

光源は3つ程度、下記を基本として、面光源で構成していきます。
・正面、上面の全体を明るくするライト
・背面から輪郭線を出すためのライト
・食材のテリ・ツヤを出すためのライト

食材やテリ感等で特別な演出を行いたい場合は、ライトを足したり引いたりして、目線を誘導できるように配置します。
湯気を強調したい場合は、背景にぶなる部分はやや暗めにしたり、合成する湯気の明度を上げたりします。

3DCGでの仕上げ

実際の撮影とは違い。CGの場合は、湯気や泡の動きをコントロール出来ますので、美味しそうに見える構図、ライティングが整えば、あとの処理は実際の撮影よりも試行錯誤がやりやすくなります。
この試行錯誤も回数をこなしてうまくなります。

最後に、もっとも基本的な事だと思いますが、CMや外食のメニュー表等で、どのような視覚表現が好まれているのかアンテナを張っておくのもとても大切です。
ご家庭の主婦の皆さんが読まれているような、料理本にもヒントがあったりします。CG制作を生業とされている方は、この分野に疎い方も多いかもしれませんが、一度見てみると参考になることがありますので、ご覧になってみてください。きっと楽しいですよ。