合成用素材撮影時の注意ポイント
なぜ合成用素材の撮影が大切なのか
クロマキーはZoom等のPC会議でも活用されていますが、映像作品においては、クロマキー素材の状態が仕上がりの映像に影響を与える大きな要因となります。
これは映像中のグリーンの状態が人の目で見るものに比べシステム側からの要求が細かく詳細であることに由来します。具体的に言うと、撮影時に行うライティングからの光が被写体に投影されることで発生する映り込みや、グリーン自体の明るさの差等があります。理想的な状態で撮影するには気をつけるポイントがいくつかあり、これらを意識して撮影することで後の合成処理の時間短縮やクオリティの向上が見込めます。
そこで我々合成する側の立場からより仕上がりクオリティの高くなる映像素材の撮影ポイントをまとめてみたいと思います。
大きく分けて5つのポイント
注意すべきポイントは大きく5つ
・被写体
・背景
・ライティング
・カメラ設定
・カメラワーク
です。以下にひとつずつ説明していきます。
被写体の色・素材の選定ポイント
撮影の被写体は
・緑色(背景と同系色)のものを避ける
・反射・透けのあるものを避ける
シルク・ラメのような反射を行う素材や革靴のような表面がピカピカのものを使用すると合成時のマスク処理を手作業で行わなければならなくなる可能性が出てきます。仕上がりのクオリティを考慮すると避けたほうが良いと思います。シーンの構成上やむを得ない場合は、被写体の下や横に白や黒の板を使用して映り込みが出ないように配慮し撮影を行います。
背景(グリーン)の注意ポイント
背景に使用するグリーンは合成において透過させる部分になりますので、特に重要なポイントになります。
・色はグリーン(✕黄緑ではない)
・背景のグリーンは、カメラから見て被写体の背後に配置する(透過する必要のある部分のみで良い)
・三方の壁がグリーンの場合は、黒い板などを使用して被写体の横の映り込みを防ぐようにする
・背景にもライティングを行い、不要な影の除去、輝度の均一化、色味(緑)の均一化を行う
背景の布が劣化すると色味が変化して黄色っぽくなり、肌の色と近くなってしまうことで合成の工数が増えたり仕上がりのクオリティに影響がでてくる可能性があります。
また、被写体と接しない部分はマスクで処理する方が効果的な場合があります。緑の面積を小さくすることで不要な映り込みや色かぶりを防ぐことができます。
背景で注意すべき点は、背景の緑と被写体の色を明確に分けられるようにするということになります。
ライティングの注意ポイント
・グリーンバックの背景に影が入らないようにライティングする
・白飛び、黒つぶれが無いようにライティングする
・合成する背景のメインとなるライトの位置を考慮してライティングを行う
合成に使用する風景や映像でのライティングと撮影時のライティングが異なると合成時に影の矛盾が生じてしまいます。被写体を照らす光の角度をなるべく同じ角度で調整することで光の違和感が少なくなります
撮影・カメラ設定の注意ポイント
・カメラの情報を記録する(焦点距離、カメラ機種、センサーサイズ等の情報があるとより良い)
・シャッタースピードを早くして撮影時の被写体ブレが発生しないようにする
・光量を多めに配置して、ノイズが少なくなるようにする(ゲインを上げない)
・撮影前にグレーでホワイトバランスをとる
・被写界深度を深くして、被写体の輪郭が明確に出るようにする
可能であれば、撮影前にカラーチャートを撮影する(ライト・カメラの設定変更時には再度撮影する)
また、撮影時の色数が多い方が好ましい結果になりますので、録画フォーマットも確認しておいてください。
ビデオカメラの場合は、圧縮率が4:2:2以上が好ましい結果になります。
カメラワークの注意ポイント
・必要最小限の動きで撮影を行う(固定が望ましい、カメラブレ等は後処理で付与する)
・カメラを動かす場合は、背景、床等にトラッキングマークを配置する
カメラワークに関しては、動かさないのが理想ですが、映像の構成上動かさずに撮影できる場合の方が少ないかもしれません。
動きがある場合は、トラッキングマークが画面上に複数個(多い方がより良い)入るようにしてください。
また、シャッタースピードも早めにして被写体ブレが出ないようにすることが望ましいと思います。