自分なりの生き方とは
「 人の行く 裏に道あり 花の山 」
この言葉は、投資分野でよく言われる言葉のようですが、人と違うところにこそ、利益となるものがある、という意味で使われるようです。
はじめに
さて、私は2017年にフィジカルアイを設立しました。それ以前はフリーランスとして映像制作・CG制作を行っておりました。今回VGT2022に参加させて頂き、多くの方と交流させて頂きました。その中で感じたのは若い方々も年齢を重ねていく中で漫然とした不安を感じていること、そしてそれは我々既に年齢を重ねているものが通ってきた道で感じたことを残しておくことで、自分だけではないと不安が和らいだり、あるいは私よりも若い時代から準備を開始できたりするのではないかということでした。
そこで、もし何かの参考になればという思いで、私のこれまでに行ってきたことを簡単にまとめておきたいと思います。将来わが社の社員になってもらえる方がいるとしたら、読んで頂けると嬉しく思います。
独立への気持ち
私は2014年まで某大手製造業の社員でした。幸いなことに社内で複数の部門で幅広い業務(商品開発・企画管理、情報システム、広告デザイン)を経験させて頂きましたが、本格的にCGを学んだことはありませんでした。けれどCGに無限の可能性と昔パソコン少年であったころに感じていたワクワクする高揚感を感じ、それは本気で独立を考えはじめるのに充分なきっかけとなりました。
CG・映像制作で独立しようと志した時、周囲に応援してくれる人はほぼ皆無でした。当時の私は「みんながダメだと思うからこそやってみたい」という思いで進んでいくことを決めました。「挑戦」という言葉にすると随分かっこいいようにも思いますが、決してそんなカッコよさを求めてではなく、自分の行動で「挑戦する姿勢」を子どもたちに見せたかったのだと思います。
将来への不安
当時の私は専門職コースの課長クラスでしたが、自分の将来に漫然とした不安を抱えていました。ハズレを引いた世代と比喩されることもあり、会社の中で一生懸命生きてきたけれど、出世するポストもなくただただ今の仕事を定年まで続けていくことにやりがいを見いだせるのか、、、いやその後の必ず来るであろう定年退職後に会社という後ろ盾がなくなってしまった私に何が残るのだろうか、など、、、そんな自分の姿がたまらなく嫌であり、それが故に子どもたちに「夢を持て」「夢に向かって挑戦しろ」と鼓舞する自分がいて。。。
自分自身が夢を持てず、挑戦もしていない、そんな親に「夢を持て」「挑戦しろ」と言われてもそれは夢の押し付けであり、誰がしたがうのか!?
45歳という年齢を考えると、このまま定年まで勤めることが安心確実なことであるのは、自分でも分かっていたのですが、それでも「やってみたい」と思う気持ちと、子どもたちに父の挑戦を行動で示してあげたいという想いが勝り、退職届を提出しました。
仕事をどこから頂くか
そんな訳で多くの反対意見を頂きながらも独立という道を選んだからには失敗はできない。どんなことがあってもやっていくという覚悟で準備を進めました。
まず、仕事をどこから頂くかということが最大の問題です。広告代理店や制作会社の方が独立するのとは違い、私の場合、前勤務先からのお仕事はありません。そこで知り合いからのコネクションではなく、独自のコネクションの確立が必要になりました。考えられたものとしては下記のようなものがありました。
- 飛び込み営業
- 仕事関係の知人を作る
- Webサイト(HP)
- クラウドソーシング
各説明していきます。
飛び込み営業
新規で始めてのお客様に訪問して行う営業です。説明の必要もありませんが、結果をいうと残念なものでした。今から考えると当然相手にされませんし、ほぼメリットはありませんでした。強いて言うならメンタル強化という感じです。
仕事関係の知人を作る
いきなりお客様になってください。という方法ではなく、まずは東京・大阪を主とした仕事の多い地域に出張し、いろいろな方と会って話を聞くというところから始めました。これはすぐに仕事に繋がることはありませんが、長い目で見ると人と人のつながりを作っていくというビジネスの根本の部分になりますので、大変重要です。この時に大切なものが、名刺(キャッチコピー)とポートフォリオです。
まず、自分が何者であるかなるべく短くわかりやすい言葉で表現したキャッチーな言葉を入れた名刺が必要です。SNSで作品の発表をしている場合はそのURLやユーザーID等も入れておくと良いと思います。
参考記事:名刺は優秀な営業マン(https://vook.vc/n/4630)
また、自分の作品は見やすくわかりやすいポートフォリオにしておきます。相手との話の中で出てきたキーワードに関連する分野の作例を見てもらい、更にお話を伺うようにします。このためなるべく幅広い分野の作例を整理して用意しておくと良いと思います。今であればタブレット端末を用意しておくと良いと思います。当時の私はGoogle Nexus9をいつも持ち歩いていました。
Webサイト(HP)
自社サイトですね。ポートフォリオはもちろんですが、行っている業務を体系立ててわかりやすく公開することが大切です。とりあえず作った、みたいなのは見る側からすると分かってしまうので、見る側の気持ちになって作ってみると良いと思います。またHPについては外注に出すよりも自分で作ることをおすすめします。Webサイトは事業内容や伝えるべき事が変わる都度更新が必要になりますので自分のタイミングで更新できる環境にしておくことは意外に大切です。
またSEOの観点からもコンテンツの内容を自身で考える上で大切なことになると思います。
HPからの受注については、サイト構築から数年を経過しないと結果がでないことがありますので、長い目で見て育てていく意識で続けていくことが大切です。HPは24時間稼働してくれる非常に優秀な営業員だと思っています。
クラウドソーシング
ランサーズに代表されるもので、クリエイティブ分野においてはすっかり存在が定着している感がありますが、短期で売上を上げる方法としては現実的なものの一つだと思います。しかしながら、玉石混交の感は否めないうえ、予算面でも安い案件が多く、対人での営業以上に交渉術が求められることがあるように思います。私は2016のランサーズアワードに選出頂いておりますが、使い方次第では充分な売上を続けることも可能だと思っています。
ちなみに現在では、自社サイトからの集客とお客様からの紹介が多くなっているように感じます。
自社サイトからの問合せや、東京大阪のクリエイター仲間、或いはお客様からのご紹介等、うちの仕事を見て他の方に勧めて頂けたりと、人とのご縁に恵まれたこともあり、3年目からは経営も安定してきはじめたように感じられるようになってきていました。しかし、毎日の仕事に追われてしまっており、未来への取り組みは出来ていなかったように思います。
後からわかることなのですが、この時点では将来の明確なビジョン(X年後にどうしたいか)がなく、それが故に自分の行動や制作活動にブレが生じ、お客様にどんなことが出来るのかも明確に伝わらなくなっていたのではないかと思います。
ブランディング考
2017年にはフィジカルアイとして法人化を行いました。それまではフリーランスとして活動しておりましたが、法人化に伴い「会社」としてHPも新しく作り直すことにしました。
ご依頼頂く案件のほとんどがCG制作になり、CGに集中できる状態にはなってきましたが、この段階で新しい問題も大きくなってきていました。それは「強み」と言えるものが無いことでした。
実社会は学校ではありませんので、他の人(会社)と同じようなことをして満足していてはダメです。
とはいえ自分が得意とするものが思いつかず、日々の依頼事項の対応に追われている状態では何をどのようにすれば良いのか分からない状態だったのは間違いありません。
そこで考えを整理し、下記の全てに該当するものを探してみました。
・他の人がやらない・やりたがらない or できない事
・自分が行っていて苦痛でないこと、或いはその勉強が苦痛でないこと
・ニーズがありそうなこと
これに該当するものがあれば他社との差別化ができるはずです。さらにここで気をつけたのが、「強み」に早い安いという系統のものを含まないようにすることでした。
フリーランス時代に、「短時間納品対応」「安価な制作費用」という手段をとったことがあり、そのいずれもが最終的に達成感や幸福感に繋がらないということを経験していましたので、制作活動を続けていくことが自分と会社の成長につながるようなことを「強み」にしないといけないと考えていました。
そして、見つけたのが「流体」でした。当初の調査では技術要件が高く流体に関する専門知識を持っていない門外漢の人間が「流体」を謳うことに猛烈な抵抗を感じたのですが、それならば勉強すれば良いのだと考え、また素人だからこそ見つけられる着眼点もあるのだと信じて、「強み」にできるように準備を始めました。
そして いま
流体をやると決め、今では東京大学医学部様と血管内や鼻腔内の流体についてお話できるような機会を頂けております。関わって頂いた皆さまにひたすら感謝する日々です。しかしご期待以上の物を提供していけるようにと更に精進していきたいと思っております。
このブランディングの方向性が良いのかどうかは、まだ結論が出ていないと思っています。常に見直し、調べ、考え直す、その繰り返しが前に進んでいく為に必要だと思っています。
そして、選択を悩んだときには、「人の行く 裏に道あり 花の山」の言葉を思い出し、自分の道で自分の花が咲かせられるようにしていきたいと思っております。