流体シミュレーションCG(3DCG)

3DCGと物理演算によるシミュレーション

CG制作において、今後活用分野の拡大が期待されているものに、3DCGでの流体表現があります。流体とは液体・気体といった流れる物質のことで、これを物理演算を用いたシミュレーションを行うことで物理的に正しい表現でリアルに再現することが出来ます。このシミュレーションは高い演算能力を必要としますのでこれまでのCG制作においては活用場面が少なくなっていたことも事実かと思います。しかしながら、PCの能力向上やGPUといった演算能力の高いデバイスを活用できるようになったことでPVやイベントでの演出にも活用できるようになってきました。弊社ではこれら流体を積極的に活用した流体表現を行っております。

流体の制作必要となる物理演算

流体の再現には、粒子の動きを自然界の物理法則に従って計算することが求められます。重力はもちろん気体・液体により粘度粘性、温度、表面張力といった様々な要因を全て計算して流れの結果を視覚化してく作業になりますので、非常に演算パワーが必要になります。十数年前まではスーパーコンピュータと呼ばれる大型の特殊な専用機材を使用しての作業でしたが、近年のGPUの高性能化によりワークステーションクラスでも演算処理が行えるようになってきています。これにより弊社のようなCG制作会社でも流体を用いた3DCGの制作が可能になってきました。また粒子の動き以外でも光の透過・反射といった光学的な演算も行えます。現実世界での光の挙動を再現できますので理論上実写と変わらない映像を制作することが可能になりました。これは同時に現実世界の物理法則がもし違ったら、といった現実にはありえない状態を視覚的に再現することが可能になるということでもあり、これは想像を超えたシュミレーションによる映像制作とも言えます。これはCGによってはじめて実現できた映像といえます。このようにこれまでのイラストや図といった再現にとどまらず人間のイメージを超えた映像を具現化できるのも3DCGに期待されることだと思っております。

物理演算により再現が期待されるシーン
  • 実施に危険を伴うもの (事故・災害の再現)
  • 実施が不可能なもの (物理条件が異なる等の条件での試験)
  • コスト的に難しいもの (建築物の位置確認、巨大なオブジェクトの配置など)
  • 膨大なパターンテスト

シミュレーションにおいては、パラメータの設定により結果が大きく変わってきますので、様々なパターンでの試験が必要になることがあります。これによる時間コストを削減する為にミニマムなテストを行った後に高精度のテストを行うのはもちろんですが、これまでのノウハウなどにより最適解を短時間で求められるのが弊社の流体シミュレーション技術です。

流体シミュレーションを用いたCG制作

物理演算を用いて制作されるリアルな映像は、どのような分野のものであるか具体的にご説明したいと思います。

流体(液体、Fluid、Liquid)

例:浸水体験コンテンツ

液体の流れを再現します。
水、はちみつ等の液体形状のものを再現できます。大規模な水のシミュレーションとしては災害体験コンテンツが挙げられます。実際に浸水を行うのは危険もあり難しいですが、シミュレーションなら可能です。シミュレーション結果を映像化することでリアルに体験するコンテンツとして教材化することも可能です。もちろん3DCG制作ですので、VRコンテンツとして体験型にすることでより高い教育効果(経験)とすることが可能です。

流体(気流の見える化)

例:火災・事故再現

気体の流れを再現します。
煙、炎といった表面張力のない気体のシミュレーションです。空気の影響を受けますので演算は複雑になります。再現CGにおいては煙が描画されることでリアルさは格段に向上します。VFX合成用の煙においては正確さよりも演出的な部分もありますので、物理的正確なものよりも演出意図にあったリアルに見えるものが求められます。正確な再現性と意図した動きを再現するバランスが求めれる場面もありますが、そのいずれにおいても柔軟に対応可能です。

物理演算を用いたCG制作

光学的な表現や物質の動きを物理の法則に従いアニメーションさせることが出来ます。
物理演算を用いたCG制作は「リアル」という面で評価されています。

剛体(物体の動きの再現)

例:機械動作シーン・自動車走行シーン

個体の動きを物理の法則に従い再現します。
オブジェクトに働く力とその影響を演算し、どのように動くのかを再現していきます。リアルな力も、ありえない力も設定出来ますので、再現に留まらず試験的に評価用の映像を制作することも可能です。工業製品のCG制作、特に自動車、自転車等の場合は、可動部の動きをどの程度再現するのか、その際の可動域や抵抗値等を配慮することも必要になってきます。
動作シーンのパーツ細部の動きがリアルであれば説得力のある映像が制作可能です。

光学(ライト、太陽光などの光源からの影の場所)

例:ゼリー等半透明性状の再現

アップルゼリー

主に、見た目のリアルさに大きく影響を与えることから、フォトリアルな映像の制作に利用されます。光学的に正確であることから建築物の建築前に、建築後の日照条件や、景観の変化などを確認したり同じ建物を複数建築した場合の景観について実写に合成することでよりリアルにイメージすることが出来ます。

流体を使用した作例

物理演算による流体はその動きのリアルさ故にシミュレーションでの活用にとどまらず、モーションデザイン・モーショングラフィックス分野での活用も期待されています。細かい粒子や線の動きは、手作業は難しい物量を動かすことが出来ます。またリアルな動きの中にアンリアルな動きを取り入れることで記憶に残る映像を制作することも可能になります。もちろんこれもCG制作ならではの表現になります。

火山噴火シーン

火口から噴出る溶岩と噴煙に流体を使用しています。実際の撮影現場は危険であり実際に噴火の瞬間を捉えることは難しいシーンですが、CGならば再現が可能です。噴火の瞬間を捉えることも現実では困難なシーンですが、噴火や溶岩の流れも演出どおりに再現が可能です。

粉体混合シミュレーション

液体のパラメータの変更により粉体の動きを再現できます。工業製品中の粉体の動きを視覚化できますので製品紹介PV等で使用でき効果が目で見えてわかりやすいものになります。粉の動きは物理演算ですので様々の動きを再現できるのも物理演算を使用したCG映像ならではの表現です。

渦巻き再現シミュレーション

水の流れをシミュレーションします。多方向からの流入と下からの力の影響などをシミュレーションしていきます。再現したい動きを目標として映像化する方法と、影響のある力をシミュレートしていき結果を見やすい形に表現していく方法があります。

水流シミューレション

災害体験コンテンツにおいて浸水イメージは使用頻度の高い要素です。迅速な避難に繋げるためにも視覚的にリアルなコンテンツは重要な演出となります。3DCG制作では迫ってくる水をその勢いが映像から伝わる迫力で表現することが可能です。

海面を進む船の白波のシミュレーション

海面を行く船体により生成される白波のシミュレーションになります。海面下の構造により生成される波の形状や大きさは異なりますので物理演算により波を生成します。意図して描かれるものではなく演算により生成される波はリアルな表現の映像づくりに貢献できます。

ジェットエンジン動作イメージCG

ジェットエンジン内部の動作状況を目で見ることは難しい為、3DCGによる視覚化は非常に有効です、その際に流れる空気を表現するために白の気体として映像化しました。エンジン内部の高熱源の表現と併せて映像化することでリアルな表現が可能となります。

テトラポッドと波の関係

視覚的にわかりやすい液体表現の作例です。テトラポッドに打ち寄せる波の勢いが弱くなっていくのを視覚的に表現しました。波をメッシュではなく球体にし、スピードにより色を変えています。外見をリアルにするのではなく動きのみリアルな動作にしております。

液体の中を歩くシミュレーション

静止したみ液体中に動く物体が与える影響を視覚化しています。こちらも液体を小さい球体としてスピードにより色を変化させています。全く同じ人物の動きで液体の粘度だけを変えたり、重力を変えたりと物理的な条件を変えて視覚化出来るのは3DCG制作だからできることです。

流体によるモーショングラフィックス

液体の動きに追従した線を描いて生成されるモーショングラフィックスになります。

流体によるモーショングラフィックス

液体中に放出された球に線を追従させて描いたモーショングラフィックスです。

花モチーフのモーショングラフィックス

球の動きは上昇気流の動きで再現しています。花をモチーフとした描画にすることでリアルなものではないけれど動きがスムーズでリアルな独特の世界観を表現することも可能になります。

煙流体のモーショングラフィックス

煙の動きをラインで表現しています。物理演算で生成されるモーションになりますが、様々なパラメータを設定することで意図する動きを目指していきます。リアルなものからアニメ調まで幅広い表現が可能です。