2026年4月に、LTX-2.3をローカル環境で動かし、「動画生成AIは業務で使えるのか」という検証を行いました。

当時の結論は、「活用できる。ただし、現状では補助的な動画素材として使うのが現実的」というものでした。人物が動く映像を生成することはできても、クライアントワークの主軸として使うには、品質の安定性や制御性などにまだ課題があると考えていました。
それから約4か月。動画生成AIの進化は非常に速く、LTXシリーズはLTX-2.5へ進化し、MiniMaxからはH3が公開されました。MiniMax H3は2026年8月3日にオープンウェイトとして公開され、H3-Baseはローカル環境で実行できます。ComfyUI用のワークフローも用意されています。 LTX-2.5についても、Lightricksの公式実装で2026年8月11日から対応しています。
前回からわずか数か月ですが、状況はかなり変わっているように感じます。
そこで今回は、MiniMax H3を中心に、現在のローカル動画生成AIがどこまで進化したのか、そして実際の映像制作でどこまで使えるようになったのかを、あらためて検証してみます。
LTX-2.3から、どこまで進化したのか
LTX-2.3は、現在振り返っても十分使えるモデルだったと思います。特にI2V(Image to Video)では、開始フレームの段階で構図、ライティング、人物の状態などをある程度固定できます。前回も、業務で使うのであればT2VよりI2Vの方が現実的だと考えていました。
ただ、実際に使い込んでいくと、凝ったものを作ろうとするほどトライ&エラーの回数が増えていきます。開始フレームをNano Bananaなどでしっかり作れば、画質や構図についてはかなり高いレベルを維持できます。しかし、そこから先の「動き」が必ずしも思った通りになるとは限りません。
人物の簡単な動きであれば比較的うまくいきますが、演技を細かく指定したり、複雑な動きをさせたりすると、狙った結果になるまで何度も生成することになります。実際、LTX-2.3では10テイク程度生成することも珍しくありませんでした。特に難しかったのが、津波のような複雑な現象です。開始フレームは作れても、そこから津波が押し寄せ、建物にぶつかり、倒壊するといった一連の流れを思った通りに動かすことは簡単ではありませんでした。前回の記事でも、カメラの動きについてはプロンプトだけで正確に制御することが難しく、複数回の生成と選別を前提にした方が現実的だと書いています。
MiniMax H3を使ってみて、まず大きく違うと感じたのが、この「指示に対する応答性」です。LTX-2.3とは比較にならないくらい、プロンプトで指示した動きを素直に反映してくれる印象があります。I2Vを使った実際の制作でも、LTX-2.3では10テイク程度試すことがあったものが、H3では数テイクで使える結果に到達するケースが増えました。
これは単純な画質の向上以上に、業務で使うことを考えると大きな違いです。
なぜローカルで生成するのか
クラウド型の動画生成サービスも、この数か月で大きく進化しています。
単純に「高品質な動画を一本生成する」だけであれば、クラウドサービスを使う方が手軽な場合もあります。それでもローカル生成を続けている理由の一つは、やはりトライ&エラーです。
前回の記事でも書きましたが、クラウドサービスでは生成するたびにクレジットを消費します。ローカルでは時間と電力は必要ですが、生成するたびに追加料金が発生するわけではありません。動画生成では、一度で完璧なものができることはほとんどありません。少し動きを変える、カメラ位置を変える、演技のタイミングを調整する、といった試行を何度も行います。
この「何度でも試せる」という環境は、映像制作との相性が非常に良いと感じています。
もう一つ、今回あらためて感じたのが、ローカルAIを単体のツールではなく、制作工程の一部として組み込めることです。静止画を作り、ComfyUIに渡して動画を生成し、必要ならアップスケールを行い、その素材をPremiere Proで編集する。画像生成、動画生成、編集といった工程を自分たちの制作環境の中で組み合わせられます。
「AIサービスを使って動画を作る」というよりも、CGソフトや編集ソフトと同じように、動画生成AIを制作設備の一つとして扱う。ローカル生成には、そういう意味があるのではないかと思っています。
MiniMax H3を実際に使ってみる
今回、MiniMax H3はComfyUI上で動かしています。
使用しているGPUはRTX 3090(VRAM 24GB)。現在の設定では、1280×736、10秒の映像生成に約30分かかります。速度だけを見れば高速とは言えません。また、最終的に1920×1080で使用するのであれば、アップスケールも必要になります。それでも、実際に使った印象としては、いよいよ実用レベルに入ってきたと感じています。
理由は先ほどの「テイク数」です。映像制作で重要なのは、1回の生成が何分で終わるかだけではありません。
仮に10分で生成できても、狙った結果になるまで10回必要なら100分かかります。一方、1回30分でも2~3回で決まるなら、最終的な制作時間はそれほど変わらなくなります。
「1テイクの生成速度」ではなく、「採用できるカットを得るまでにどれくらいかかるのか」。
業務利用では、この視点で評価する必要があると思います。LTX-2.5についても試しています。生成速度は速く、非常に良いモデルだと感じていますが、プロンプトへの応答性については、まだ十分な試験ができていません。
津波を生成するテストでは、こちらが指定した現象を再現するというより、映画のワンシーンのようなダイナミックな演出になる傾向を感じました。これは悪いということではありません。


むしろモデルごとに、「指示に忠実なモデル」「積極的に演出してくるモデル」といった性格の違いが出てきているのかもしれません。
クラウドモデルとも比較する
ローカルモデルだけを見て「使える」と判断するのも適切ではありません。
現在のクラウド型動画生成AIとも、同じ開始画像、同じようなプロンプトを使って比較してみます。
見るポイントは、単純な画質だけではありません。
- プロンプトへの応答性
- 動きの自然さ
- カメラワーク
- 開始フレームの維持
- 採用できる結果までのテイク数
- 生成に必要な時間とコスト
このあたりを比較したいと思います。




見ての通り、SeeDance2.5が最もよい結果になりました。
ここで私が注目したのは、SeeDance2.5の結果とMiniMax H3の結果が似ていること、これは同じプロンプトなので、意図したものになっているという点で非常に良いと考えています。
実際に一本の映像を作ってみる
前回のLTX-2.3検証と今回の大きな違いが、ここです。
前回は「業務で使える動画素材を作れるか」という検証でした。今回は最初から、一本の映像作品を作ることを目的にしています。
まずChatGPTを使い、作品のテーマからストーリー、シナリオ、台本を作成します。
その台本をカットに分解し、それぞれのカットに必要な開始フレームを画像生成AIで作ります。
完成した静止画をMiniMax H3のI2Vへ渡し、台本に沿って人物に演技をさせます。
生成したカットはPremiere Proで編集し、BGMにはAdobe Fireflyで生成した音楽を使用します。
つまり、
シナリオ作成 → 静止画生成 → I2V → 編集 → BGM
というところまで、生成AIを組み込んだ制作フローです。今回、その実例として温泉地を旅する紀行映像を制作しています。人物が現地を歩き、景色を眺め、温泉宿を訪れ、露天風呂ではバスタオルを巻いた状態で湯につかる、といった紀行番組をイメージした内容です。
ここで試しているのは、単に人物を動かせるかどうかではありません。同じ人物を複数のカットに登場させ、場所を移動させ、演技をさせ、それらを編集して一本の映像として成立させられるのか。そこまでできて初めて、「映像制作に使える」と言えるのではないかと考えています。
考察 — 動画生成AIで、できる仕事が変わる
今回MiniMax H3を使っていて、個人的に最も大きいと感じているのは、画質や生成速度ではありません。
「これまで自分たちだけでは作りにくかった映像が作れるようになる」ということです。
弊社では、工業製品や機械、内部構造などを3DCGで映像化する仕事を多く行っています。機械そのものを動かしたり、内部の仕組みを見せたりすることは得意分野です。
一方で、
「作業員が機械を操作する」
「人物が製品を使う」
「研究者が装置を確認する」
といった、人物が登場して演技をする映像になると話が変わります。実写であればキャスティング、撮影場所、撮影スタッフなどが必要です。これまで自社だけでは対応しにくかった部分です。
前回LTX-2.3を検証した時にも、人物動画を選んだ理由として、撮影の手配やモデルへの出演依頼などが必要になる人物素材をAIで補えることに大きなメリットを感じていました。
ただ、その時点では「補助素材」という位置づけでした。MiniMax H3を使ってみると、この部分が少し変わってきたように感じます。
例えば、
機械・製品は3DCGで正確に制作する。
人物が演技するカットはAI動画で制作する。
それらを従来の映像編集で一本の作品に仕上げる。
こうした制作方法が、現実的な選択肢になりつつあります。AIがこれまでのCG制作を置き換えるというより、これまで自分たちに欠けていた部分を補ってくれる。これは弊社にとってはかなり大きな変化です。
前回の記事では、ローカル動画生成AIについて「補助素材として活用しながら、技術の発展を見ていく」という結論にしました。それから数か月。
まだ生成時間や解像度、安定性、ライセンスなど、業務利用するうえで確認すべきことは残っています。しかし、少なくとも「動画を生成できるか」という段階は、もう過ぎつつあるように思います。これから考えるべきなのは、この技術を、実際の映像制作の中でどう使うのか。そして、これまでできなかったどんな映像を作れるようになるのか。
ということなのかもしれません。
ただ、進化の早いこの分野については、常にクラウドモデルとの比較や、実際の映像制作工程も含めて、常に検証しつづけていくことが必要なのだと感じました。

石水修司 株式会社フィジカルアイ代表/Adobe Community Expert
ベーマガに熱中した少年時代から、ベータカム時代の映像制作を経て、現在は3DCG制作のプロとして生成AI技術を活用した映像表現を手がけている。
Lancer of the Year 2016、CGWORLD「CGごはん」選外優秀賞。今治市在住。