はじめに:UE5でも「色空間の出口管理」が必要な理由
Unreal Engine 5(UE5)は、リアルタイム描画エンジンとして非常に高機能で、映像制作やプリレンダリング用途にも活用されています。しかし、After EffectsやNuke、DaVinci Resolveなどで合成・編集を行うためにEXR形式で出力する際は、「色空間が正しく保持されているか」を意識する必要があります。
UE5はデフォルトでACESベースのトーンマッピングを表示用に適用しており、何も設定せずにEXRを書き出すと、視覚的な補正が焼き込まれてしまうことがあります。これは、リニア合成やカラーグレーディング時に破綻の原因となります。
この記事では、UE5からリニアEXRを出力するための手順と設定ポイントを整理します。
UE5でリニア出力が求められる理由
CGやゲーム画面は、人間の目に自然に見えるようsRGBガンマカーブやトーンマッピングが加わっています。
しかし映像合成やカラーグレーディングなど後処理工程では、ガンマ補正されていない“リニア”な色情報が必須です。
まずはOCIOプロファイル(OpenColorIO)を入手する
OpenColorIO(OCIO)は映像制作やVFX現場で使われる業界標準の色管理システムです。
UE5とAfter Effects(Nuke、DaVinci ResolveなどのDCCツール)間で統一を行うために必要なファイルです。
【公式配布の入手先】
上記サイトのいずれかから「config.ocio」ファイルをダウンロードし、任意のフォルダに保存します。
OpenColorIOコンフィギュレーションの設定
UE5のMovie Render QueueでOCIOを使うには「OpenColorIO Configuration」の設定が必要です。
UE5を起動し、コンテンツブラウザで右クリック →「その他」→「OpenColorIO コンフィギュレーション」

作成されたファイルを開きます。Configuration Fileにダウンロードしているocioファイルを指定します。

Desired Color Spacesに以下を追加します。
index0:Utility > Utility – Linear – sRGB
index1:ACES > ACES – ACEScg


これで現在開いているUE5プロジェクトでOCIOが使用できるようになりました。
ムービーレンダーキュー(Movie Render Queue)の設定
ムービーレンダーキューの設定を開き、下記を追加します。
.exrシーケンス[16ビット]
カラー出力
※映像制作目的の場合は、アンチエイリアス等、求めるクオリティに必要なものを追加します。


カラー出力(Color Output)でOCIOを設定
カラー出力を選択した状態で、右のOCIOConfigrationを開きます。
is Enabled にチェックを入れます、
コンフィギュレーションソースに、先に設定したOpenColorIOコンフィギュレーションを選択します。

変換元:Utility – Linear – sRGB
変換後:ACES – ACEScg
を選択します。

この設定で書き出されたexrファイルをAfterEffectsに持っていきます。
まとめ
Movie Render Queueを活用し、OCIOを用いた適切な出力形式(OpenEXR/Float16)で書き出すことで、正確なscene-linearデータの中間ファイルとしてEXRを運用することが可能になり、VFX合成やカラーグレーディングといったポストプロダクション工程において、色情報やダイナミックレンジを損なうことなく、プロフェッショナルな映像制作ワークフローが実現できます。
OpenColorIO(OCIO)を利用してプロファイル管理を徹底することで、Unreal Engine 5だけでなくAfter EffectsやNuke、DaVinci Resolve等、他のDCCツールとの間でも色の統一が出来るようになり、色再現性のトラブルを大幅に減らすことが可能です。




