職人技術の継承を支援する3DCG映像マニュアル化

目次

言葉や写真だけでは伝わりにくい技術を、映像で残す

追掛け継ぎや金輪継のような木材継手は、完成すると内部の構造が外から見えなくなります。どの形状がどう噛み合っているのか、どの方向から組み合わせるのか、完成後には隠れてしまう部分がどんな役割を持っているのか——こうした情報は、実物や写真だけでは十分に伝わりません。

本事例では、木材継手を3DCGで再現し、職人技術の継承を支援する映像マニュアルとして可視化しました。

抱えていた問題

職人技術の継承では、「見て覚える」「経験で理解する」という場面が多くなります。実物を前にして手を動かすことは、技術習得において欠かせない要素です。しかし、形状の意味、動きの順序、内部で噛み合う構造は、実物や写真だけでは伝わりきらないことがあります。
特に木材継手のような構造は、組み上がった状態では内部の関係が完全に見えなくなります。実写撮影を試みても、手元や工具に隠れる部分が出てきます。カメラが入りにくい角度があります。工程の途中で止めて構造を確認したい場面でも、実演では対応しにくい。
さらに、熟練者が持つ「なぜこの形状でなければならないか」という構造の理解は、言葉にしにくい部分でもあります。長年の経験から体得した判断は、図面や写真に落とし込んだだけでは次世代に渡りません。
技術を次世代に伝えるためには、実物・実演・写真・図面に加えて、構造と手順を整理した映像マニュアルが有効です。

フィジカルアイの解決アプローチ

3DCGを使うことで、完成後には見えなくなる内部構造や、部材同士が噛み合う過程を、必要な角度から確認できます。カメラ位置は自由に動かせます。再生速度は調整できます。実写では難しい視点から、部材の内側を映すことも可能です。

追掛け継ぎは、材を斜めに加工して噛み合わせる継手です。外から見ると単純な接合に見えますが、内部では複雑な面同士が接触し合っており、引張・圧縮・せん断のそれぞれに対して抵抗する形状になっています。完成形だけを見ていても、なぜこの形なのかは伝わりません。3DCGで部材を分解し、組み上がる順序を段階的に見せることで、形状の意味と手順を同時に伝えられます。

金輪継は、縦方向の引張力に対して強い継手で、古くから柱の継ぎ足しに使われてきました。楔を打ち込むことで締まる構造をもちますが、完成状態からはその仕組みが読み取れません。どの方向から部材が入り、楔がどう機能するのかを、3DCGで段階的に示しています。

制作のポイント

技術の「見えない部分」を見えるようにする

職人技術では、完成形だけでなく、そこに至るまでの手順と構造の意味が重要です。木材継手の場合、外から見える形状と、内部で働いている力学的な役割は別物です。
3DCGでは、内部構造、部材の重なり、差し込む方向、組み上がる順序を段階的に見せることができます。透過表示や分解アニメーションを使えば、完成後には絶対に見えない内部の接触面や、噛み合わせの形状も確認できます。「この凹凸がなぜここにあるのか」を、映像として見せられることが3DCGの強みです。

熟練者の説明を補助する映像にする

映像マニュアルは、熟練者の代わりになるものではありません。職人技術の本質は、実物を前にした実演と、指導者との対話の中にあります。
ただ、熟練者が「ここが噛み合う」「この方向に動く」「この形状だから外れにくい」と説明するとき、その言葉に対応する映像があるかどうかで、学ぶ側の理解度は変わります。言葉だけで伝わらない部分を映像で補う。映像マニュアルの役割はそこにあります。
重要なのは、熟練者の持つ構造理解を、学習者が確認しやすい映像へ変換することです。熟練者の説明と映像が対応することで、指導の質と効率が上がります。

実写では見えない角度・工程を補う

実物や実演には、現場の質感や道具の手触りを伝える強みがあります。しかし、内部構造の説明という点では限界があります。手元に工具が入れば隠れる。横から撮れば奥が見えない。分解して戻す工程を何度も繰り返すことも現実的ではありません。
3DCGはこの問題を解決します。カメラは部材の内部にも入れられます。スローモーションで任意の工程を止められます。同じ動作を角度を変えながら何度でも見せられます。実写を置き換えるのではなく、実写が苦手な部分を補う表現として機能します。

教育・研修・技術保存への活用

制作した映像は、若手職人の研修資料として使えます。展示施設での解説コンテンツとしても機能します。そして技術の記録としての価値もあります。
特に重要なのは最後の点です。熟練者が現役のうちに構造と手順を映像化しておくことは、技術の保存という意味でも意義があります。人から人へ伝える過程で失われがちな「なぜこの形か」という設計意図を、映像として残しておくことができます。

お問い合わせ

職人技術、伝統工法、製品の組み立て工程、機械構造、作業手順など、言葉や写真だけでは伝わりにくい技術も、3DCGや映像によって分かりやすく可視化できる場合があります。
株式会社フィジカルアイでは、見た目の再現だけでなく、技術や構造を理解しやすく伝えるための3DCG映像制作を行っています。技術継承、映像マニュアル、教育用コンテンツ、研修資料、展示映像など、伝えにくい技術の可視化についてもお気軽にご相談ください。

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石水修司 株式会社フィジカルアイ代表/Adobe Community Expert
ベーマガに熱中した少年時代から、ベータカム時代の映像制作を経て、現在は3DCG制作のプロとして生成AI技術を活用した映像表現を手がけている。
Lancer of the Year 2016CGWORLD「CGごはん」選外優秀賞。今治市在住。

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