映像制作を初めて発注するとき、「何を、どう伝えれば見積もりや提案がもらえるのか」が分からず困ってしまうということありませんか? 仕様も予算もまだ決まっていない段階で、制作会社と何をどう話したよいのか、と考えてしまうことは珍しくありません。
弊社フィジカルアイでは、企画構成のツールとしてヒヤリングシートをご用意しております。「企画」と「お見積り」の2枚に分けてあり、簡単な質問事項に回答していく形で、企画内容をまとめていくことができるようなシートになっています。決まっていない項目は「未定」のままで構わない作りです。本記事では、そのシートを実物のままお見せしながら、映像制作の依頼をどのように進めていくことができるのか、ご説明させて頂きます。
ご記入の前に|伝わる映像の考え方
作り手は120秒話したい。見る人は10秒で知りたい。
映像の企画段階で最も多いすれ違いがこれです。
技術を知る人ほど伝えたいことが多く、60〜120秒でしっかり説明する映像を求める傾向があります。
一方、見る側が製品映像に立ち止まるのは5〜10秒。展示会の来場者はモニターの前を数秒で通り過ぎ、SNSではさらに短い。詳しい説明が聞きたくなるのは、最初のポイントが刺さった後です。
このため、伝えたい内容をふんだんに盛り込んだ映像では「内容は正確なのに最後まで見てもらえない」という映像になってしまいます。(TV番組や映画のような作品とは大きく異なる要素です)
これを解消するには、順番を考えて構成することです。「作り手が話したい順番」だけではなく、「見る人が理解できる順番」や、重要な内容を整理して表現していく、という考え方で構成を組み立てる。その整理のために、ヒヤリングシートを活用していきます。
実際のシートの記入項目ごとに見ていきましょう。
映像(CG)企画ヒヤリングシート Word | 映像(CG)お見積りヒヤリングシート Word
企画ヒヤリングシート:4つの質問
【画像:企画ヒヤリングシート(記入例入り)】
Q1. この映像で、いちばん言いたいことは何ですか?
この設問だけ、記入欄が2つに分かれています。
・いちばん伝えたいこと
・そのほかに伝えたいこと
先ほどの「120秒と10秒」の話が、そのまま形になった部分です。伝えたいことを同じ重さで並べると、どれも印象に残りません。そこで、まず「これだけは伝わってほしい」というひとことを決めます。映像の冒頭でそれを見せて、見る人の足を止めるためです。
ただし、ほかに伝えたいことを捨てるわけではありません。だから欄が2つあります。下の欄に書いていただいた特徴や強みは、最初のひとことで興味を持ってもらった後に、続けて見ていただく部分になります。捨てるのではなく、順番を決めるための2つの欄です。
書いていただくのは、短い一文で構いません。「この装置なら、これまで出来なかった加工ができる」といった程度で十分です。
この段階でキャッチーな言葉である必要もありません。内容や特徴を整理していく段階で、どんな表現やどんな言葉がよりお客様に届くのかを一緒に考えていきます。そのための材料として、まず「いちばん」がどれなのかを決めておきたい、という設問になります。
Q2. 誰に、どこで見てもらう映像ですか?
見る場所で映像の作り方は変わります。
- 展示会モニター:音声なしで足を止める構成。ナレーション説明は成立しない場合がある
- 商談・セミナー:話す人がいる前提。映像は補助に徹する、話の流れの先導役としての役割
- SNS:冒頭数秒が勝負。縦画面も考慮
このため、展示会用の映像をそのままSNSに流用するのは難しいことが多いです。逆に、最初から複数用途が分かっていれば、メイン映像から短尺版・縦型版を効率よく派生させる設計にできます。用途を複数チェックできるのはそのためです。
見てもらいたい相手も同じです。技術者の方が見るのか、経営層の方が見るのかで、どこまで技術的な内容に踏み込むかが変わります。チェックは複数で構いません。「業種・立場など、もう少し具体的な相手像があれば」の欄には、思い当たることがあれば書いていただく程度で十分です。
Q3. 見た人に、次どうしてほしいですか?
映像を見終わった人に、どう動いてほしいか。映像のゴールをお聞きする設問です。
ゴールが違うと、映像の締めくくり方が変わります。問い合わせをしてほしいのであれば、最後に連絡先や次の行動を示す場面が必要になりますし、「会社や製品を覚えて帰ってほしい」のであれば、社名や製品名を印象に残す見せ方が必要になります。「安心・信頼してほしい」なら、実績や品質を裏づける場面の比重が増えます。
チェックは複数で構いませんが、その下に「いちばん期待する反応をひとつ挙げるとすれば」という欄を設けています。Q1と同じ考え方で、優先順位がはっきりしているほど、構成の軸が定まります。
Q4. 参考イメージ・避けたい雰囲気はありますか?
映像の雰囲気についての設問です。「わかりやすい・親しみやすい」「先進性・技術力」「落ち着き・安心感」など、近いものを選んでください。
自由記入欄では、参考にしたい映像のURLだけでなく、「こういう表現は避けたい」というご要望もお聞かせください。出したい雰囲気は言葉にしにくくても、「これは違う」ははっきりしていることも多いと思います。
避けたい方向が分かるだけで、進む方向性が明確になることもあります。
記入後:構成に整理して返します
いただいた回答をもとに、話す順番・各場面で見せるもの・見せ方を弊社で整理したのち、「この構成でどうですか」と提案させていただきます。きれいな表現や、キャッチーな言葉の選定で悩む必要はありません。シート冒頭に「うまくまとまっていなくて大丈夫です」と書いてある通り、まずは思いを言葉にしてください。そこから一緒に作り上げていくための、情報整理のツールだと考えていただければと思います。
その際に、見ていただきたいのは、細部よりも「Q1に書いた”いちばん伝えたいこと”が、映像の軸になっているか」です。方向を正しく表現できてるかどうかを最初に明確にしておくことが重要になります。
お見積りヒヤリングシート:「未定」のままで出せます
【画像:お見積りヒヤリングシート(記入例入り)】
お見積り用のシートをご用意しています。こちらでは、映像の仕様と、お手元にある素材について伺います。
企画が固まる前の段階でも、概算のお見積りはお出しできます。「まず社内で予算感を確認したい」という段階でも、お気軽にご相談ください。
Q1. 映像の用途・使用場所
企画シートのQ2と重なりますが、こちらは金額に関わる項目になります。使用場所が複数ある場合、それぞれに合わせた書き出し(横型・縦型、長尺・短尺)が増えるためです。
最初に伺えていれば、メインの映像から派生させる前提で組み立てられますので、あとから追加するよりも費用を抑えられることが多くなります。
Q2. 映像の仕様
映像の長さなど、制作する映像の仕様に関してチェックを入れて頂きます。
納品形式やBGMの有無などは、特に決まってなかったりご判断がむずかしい部分もあるかと思います。決まっている項目だけお選びいただければ、あとはご提案の中で「この用途でしたらこうするのがおすすめです」とご相談しながら決めていきます。
早い段階で分かると助かるのが使用開始予定日です。展示会など使う日が決まっている場合は、そこから逆算してスケジュールを組みます。「ループ再生」も、展示会モニターで流し続ける場合に関わってきますので、用途が展示会でしたら、あわせてお知らせください。
Q3. ご提供いただける素材
3DCG制作に必要な項目です。「CADデータがないと頼めないのでは」というお問い合わせをよくいただきますが、写真と図面からも制作可能です。これらの有無により工数や費用が変動する可能性があります。
- CADデータ(3D/STEP等)がある → 形状を正確に、効率よく再現できます
- 製品写真・図面のみ → 制作可能です。実際にそうしたご依頼も多くあります
- 手元に何があるか分からない → チェックだけ入れて、補足欄に「写真は数点のみ」など書いていただければ十分です
素材は後日のご提供でも構いません。なお、図面やCADデータは機密情報そのものですので、秘密保持契約(NDA)の締結にも対応しています。
Q4. ご予算・その他
目安のご予算をお聞かせ頂く項目です。金額の幅にチェックをいただくだけの形にしています。
3DCGは、同じ内容でも作り込みの度合いによって費用が変わります。おおよその範囲を伺えていますと、その中でどこに比重を置くか——どの部分をしっかり作り込み、どの部分を簡略にするか——もあわせてご相談できます。決まっていない場合は「未定・要相談」にチェックをお願いします。
なお、先に相場感を知っておきたいという場合は、概算見積もりシミュレーターでおおよその金額をご確認頂くことも可能です。
シート記入後、納品までの流れ
シートをお送りいただいてから納品までは、ご要望の納期に向けてスケジュールを調整致します。
(特にご指定のない場合は、1~2か月が目安になります)
ヒヤリングシートのご記入
書ける範囲で結構です。ここが出発点になります。
ヒヤリング打ち合わせ1回
シートをもとにご相談します。「未定」の項目は、この場で一緒に決めていきます。
お見積り1〜2週間後
構成案とあわせて金額をご提示します。ご確認のうえ、ご判断ください。
※ご決済にサンプルなどが必要な場合はご連絡ください。
制作・修正1〜3ヶ月
節目ごとに映像をご確認いただき、ご意見を反映しながら仕上げていきます。
納品
使用場所に合わせた形式で出力し、納品いたします。
お客様にお時間をいただくのは、ヒヤリング・お見積りのご確認・制作(修正含む)のご確認の3つの段階です。
そのほかの期間は、弊社での制作作業になります。
よくあるご質問
ヒヤリングシートのダウンロード
記入用のシートは、下記からどなたでもダウンロードいただけます。お問い合わせの前に眺めていただくだけでも構いませんし、書ける範囲でご記入のうえお送りいただければ、そこから一緒に整理いたします。
映像(CG)企画ヒヤリングシート Word
映像(CG)お見積りヒヤリングシート Word
ご検討の段階に合わせて、下記もご利用ください。


石水修司 株式会社フィジカルアイ代表/Adobe Community Expert
ベーマガに熱中した少年時代から、ベータカム時代の映像制作を経て、現在は3DCG制作のプロとして生成AI技術を活用した映像表現を手がけている。
Lancer of the Year 2016、CGWORLD「CGごはん」選外優秀賞。今治市在住。