商品プロモーションビデオ(PV)の構成
自動車や飛行機、船舶といった工業製品には、他社に負けない特長や特性などがあります。これらの良さを知ってもらうためにプロモーションを行う場合、いくつかのポイントを抑えておくことが大切になります。
最低限入れておきたい情報としては下記のものが考えられます。
押さえておくべきポイント
・ユーザーの声 (感性的な批評)
・構造の解説 (理論的な理解)
・類似品との差 (比較)
これらを表現する手法として最も使いやすいツールは「映像」であり、それらはプロモーションビデオ(略称 PV)と呼ばれます。このプロモーションビデオ(以下PV)は、見やすく、伝わりやすい内容で構成していきます。
そのため単に流れを説明するのではなくストーリー性を持たせたり、映像作品のように視覚的な表現にこだわったりする場合もあります。単に伝えるだけの映像では、見る側に何も伝わりませんので、見る側の視点や考えていることを意識して構成を行っていきます。
見る側の意識や心理状態を考慮してコンテンツの内容を組み立てるのは、インストラクショナル・デザイン(ID)と呼ばれる考え方を応用していくことでより効果的な映像となります。
そして、しっかりと練られた構成に加え、視覚的に整理された解説映像を使用することで、より理解度が高まっていきます。では視覚的に整理された映像とはどういうことなのでしょうか?
整理された映像
一般的に撮影された映像には多くの情報が含まれています。このため目で見た風景を写真撮影するといろんなものが入ってしまって目で見たときのような感動が表現されないと感じたことがある方は少なくないと思います。これは人間の目は入ってきた情報を脳で整理している為で、不要と判断されたもの(見たいと思ったもの以外)は見えていないに近い状態で認識されているそうです。
写真や動画のようにカメラのレンズを通して映像化したものは光学的に入ってきた情報はすべて表現されていいますので、情報が多くそのため「分かりづらい」映像になってしまいます。
このため、写真家や映像作家の方々はファインター内の被写体をいかに強調し、不要なものを除き(分かりづらくする)等の工夫を行い、目視した感動を映像化することに能力を発揮しているのだと思います。
このように映像で「伝えたいこと」を表現するには、情報の引き算を行い情報整理していくことが大切になってきます。
PVにおけるCG映像の役割
イラスト、CGの映像は先程書きました「引き算」とは異なり、0から足し算で映像を作っていくことになります。これは表現したいものをストレートに表現できますので直接的な表現になりますが、現実的とは言いづらいこともありリアリティという面ではやや劣る表現になりやすくなります。
では、これにリアルさを付与するには何が必要になるのでしょうか?この場合のリアルさは下記の要素になると思います。
- 造形の正確さ(形・大きさが実際のものと同じであること)
- 光と影(光学的な矛盾がないこと)
- 質感(材質が見て想像できること)
3DCGはその制作段階で立体構造を持ちます。これは商品の設計段階で考慮される形状をそのまま保持できるということでもあり、実際の製品と変わらない形大きさを視覚的に表現できると言い換えることが出来ます。
また、形状由来の特長について視覚化が容易になることも意味しています。さらに実際の工業製品と違い、組み上げた後に部分的に不可視にすることや、材質を変更させることも容易に出来ます。例えば1つのパーツのみガラスに変えて内部を見えるようにしたり、断面構造にしたり、半透明にすることも可能です。
そして、そのように視覚的に表現したことで、優位性の理論的な解説が可能になります。
同じとこはイラストなどでも可能に思えますが、3DCGの場合立体構造を持っていますのでカメラの位置や角度を変えたり、パーツを連続的に組み上げていくことを視覚的に表現したりと、イラストでは難しい動きも表現が可能になります。
組み上げシーンの実例:自動車組み上げモーション
断面の実例:ターボジェットエンジン構造解説
CADデータの活用
3DCGの制作に使用されるフォーマットはCADデータを活用できますので、設計者が熟考した形状を正確に再現することが可能です。そしてCADデータの活用は、CG制作におけるモデリング工程の時間短縮に繋がりますので結果的に制作コストの削減にも良い影響を与えます。当然の事ながら設計図は機密情報ですので秘密保持契約が必要になりますが、CADデータの活用においては慎重かつ厳重に取り扱えることは必須の要件になります。
XRコンテンツへと広がる可能性
3DCGデータはARといったXR(仮想現実)への転用が可能になります。これは仮想現実を取り扱うエンジンが3DCGデータを扱うことを前提として制作されたことに由来しますが、結果として3DCG用に制作されたものを少ない手間で転用することが可能になります。そしてこのことは、仮想空間上で商品を見てもらう、あるいはリアルな大きさで製品や動き感じてもらう、そしてユーザーの見たい角度で見ることができる等の「体験コンテンツ」として新しい活用に繋がることが期待されます。
PVで表現した方法そのままを仮想空間上で再現することが可能であり、体験に近いベルでの視聴はより商品への理解を高めることに繋がると思われます。
まとめ
以上のように、3DCGの制作はPV向けの映像制作にとどまらず今後の新しいコンテンツに向けてのフォーマット整理にも繋がることが期待できます。もちろんそんな先のことではなく現在のプロモーション制作においても視覚的な情報整理が行えたコンテンツはその商品の魅力を伝える為に必要となる表現であることは間違いないと言えるでしょう。